言わずと知れた宮西達也さんの『おまえうまそうだな』で有名なティラノサウルスシリーズの3作目。
何度読んでも泣いてしまう、とてもやさしくて、悲しいおはなし。
子どもへの読み聞かせにお薦めしている作品なので、内容を以下にまとめています。
内容を知りたくない方はご注意ください。
むかしむかし、大むかし。
宮西達也『きみはほんとうにステキだね』
あばれんぼうで いじわるで ずるくて じぶんかってな きょうりゅうが いました。
そんな一文から始まります。
周りに対して優しくなれない、
自分のことしか考えられない、
そんなティラノサウルスが海におぼれて、死を覚悟します。
「わるいことばかりしてきた自分なんかを誰もたすけてくれるはずがない」
そう思ったとき、
海の恐竜エラスモサウルスが現れ、ティラノサウルスを助けてくれたのです。
『ありがとう』
その言葉をうまれて初めて伝えるティラノサウルス。
エラスモサウルスは、そのティラノサウルスがどんな恐竜かを知りません。
ティラノサウルスはエラスモサウルスの優しさに触れ、
初めて他人を大事にしようとします。
嫌われたくなくて、うそをついて。
ついた嘘に胸を痛めながらも、
ティラノサウルスとエラスモサウルスは毎日会う約束をして、
お互いに知らないことを教えあい、友情を深めていきます。
「ずっといっしょにいたい」
そうティラノサウルスは思うのでした。
ところが、事件が起こります。
海の乱暴者の恐竜にエラスモサウルスが襲われてしまうのです。
傷だらけのエラスモサウルスを命を顧みず海の中から引き揚げるティラノサウルス。
動けなくなった友達を抱きかかえ、ティラノサウルスは今までうそをついていたことを泣きながら伝えます。
「ほんとうのおれは、うそつきで いじわるで……
……ほんとうの おれは……」
もうほとんどうごかないエラスモサウルスが
最後に微笑んでこう言うのです。
「ほんとうのきみは…こんなにやさしい…
ぼくのたった ひとりの ステキな ともだちさ…」
静かな夜にティラノサウルスのなきごえがひびきました。
優しくてまっすぐなエラスモサウルスと、
今までいじわるだったと自覚しているティラノサウルスが
お互いを思い合う様子は涙なしには読めません。
かなしいけれど、優しさと友達を大切に思う気持ちが心に深く沁みてきます。
やさしくて温かくなる大好きなおはなしのひとつです。
2歳の娘と6歳の息子にも、たしかに響くものがあったようです。
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